先ずは守備範囲の楽器から。
アイルランドの鞴(フイゴ)式バグパイプ、イーリアンパイプスの説明 
概要
Uilleann Pipes (イーリアンパイプス) はアイルランド特有のバグパイプです。
バグパイプは口からバックに息を吹き込むものが多いのですがイーリアンパイプスはひじの下に挟んだフイゴを使用してバックに空気を送り込みます。
このひじの事をアイルランドの国有語であるゲール語でUilleannと呼ぶのです
が、此処からひじを使ってフイゴを上下させバックに空気を送って演奏するバグパイプなので Uilleann Pipes(イーリアンパイプス)と呼ばれるようになったと言われています。

- フルセット、Uilleann Pipes: 1988 Alain G Froment氏製作
ちなみにイーリアンパイプスと同じくらいにアイリッシュパイプス(アイリッシュパイプ)という呼び名も使用されていますので本サイトでは両方の呼び名を使用します。
呼び名ですが僕が聞いた限りでは現地の人の発音はイル(ャ)ンパイプスに聴こえました。
そしてアイリッシュパイパーやミュージシャン同士では単にパイプスって呼んでます。
そうそう、日本語ではパイプと呼んでいますがバグパイプ類はパイプスと複数系?にして呼びます。
複数の部品が固まって出来てるからでしょうか?よくわかりません。
構造
アイリッシュパイプは次の様な部品で構成されています。

-
- アイリッシュパイプの各部品名称
チャンター

- チャンター
アイルランド/イングランド/スコットランド系のバグパイプ類ではメロディーを演奏する管をチャンターと呼びますがチャンターの大きさ、指使い、音域はパイプの種類により全く異なっています。
多くのチャンターの音域は1オクターブ若しくは1オクターブ+1音が多く大抵のチャンターには表に7つの穴、裏に1の穴が空いています。
| 代表的なバグパイプチャンターの特徴一覧 |
| パイプ名 |
キー |
音域 |
| Highland Pipes
(ハイランド・パイプス) |
古い楽器ではG、Aも存在。
現在は Bbが使用される。 |
1オクターブ+1音
半音は出せない。 |
| Irish Pipes
(アイリッシュ・パイプス) |
Bb、C、D、Ebが存在。
通常はDが使用される。 |
2オクターブ。 Cナチュラル、Ebはキーなしでも出す事が可能。 半音は付属のキー装置を使用すれば発音可能。 だだし、半音を使った曲自体、普通はあまり演奏しない。 Cナチュラルは普通に使用しますがチャンターにより音程の不安定さがあります。 |
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Northumbrian Small Pipes
(ノーザンブリアン・スモール・パイプス)
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FもしくはG。
このパイプでコンサートピッチ呼ばれているのはキーがF。
最近では他の楽器との合奏が多くなりGもよく使用される。 |
付属のキー装置が無い場合は1オクターブ。
キーが無いチャンターにキーを追加していくことにより音域や出せる半音が増えていきます。
詳しくは本サイトここを参照。 |
バッグ
フイゴから送られた空気若しくは口から吹き込んだ空気を溜める袋です。
多くは羊、牛の皮で作られます。
メインストック

バックから送られた空気をチャンター以外の各管に分岐するための部位です。
フイゴ
利き腕の肘の下と胴体部分に装着して腕の上下でフイゴを動かしバックにバックに空気を送ります。
ドローン
バックにつながったメインストックから出た3本の管です。 それらの3本からは一定の音(基音のD)が出るようになっています。
多くのバグパイプはこの様なドローン管が付いています。
レギュレーター

バックにつながったメインストックから出た3本の管の上に4~5本のキーが付いておりそのキーを押すと音階がなるようになっています。
つまり3本のレギュレーター、それぞれのキー、最大3つを押すと3和音がなります。
パイパーはチャンターでメロディーを出しながら右手、下側をこのレギュレーターのキーに押し付けて和音をならす事を行います。
これによりチャンターでの音階、ドローン管が3本、レギュレータが3本で合計7つの音が鳴ることになります。
特徴
アイリッシュパイプは数あるパイプの中でもっとも進化したパイプです。
ただしこれはあくまでも演奏法の面だけで・・・ (後で説明しますがアイリッシュパイプはある意味凄く遅れている部分が沢山あります。)
アイリッシュパイプの優れているところ。
それは次の様な事です。
- 音域が2オクターブある。
- 全く音を止めることなく演奏できる。
- 好きなだけ音を止めることができる。
これについて簡単に説明してみます。
音域が2オクターブある
アイリッシュ・パイプはオーバーブローで2オクターブの音域を出す事が出来ます。(オーバー・ブロウとは笛等の少し強めに息を吹き込むと音が1オクターブ裏返りますよね。あの現象です。)
機械的な構造(キーの使用)が無くて2オクターブの音域を出せるのはおそらくスペインのガイダとアイリッシュパイプ位でしょうね。
通常、ホイッスルなどの楽器では簡単にオーバーブロー出来ますがフリーリード(口で吹くのではなく管の中に収納された状態のリードの意味)楽器でオーバーブローさせるのは本当に難しいのです。
それは2オクターブの音域を出す事が出来るリードがなかなか存在しないという事に帰着します。
多くのアイリッシュパイパーはリードを自作したり信頼の置けるビルダーにリードの作成を依頼しますがこのリードが曲者で、あるメーカーのチャンターで使用できるリードは他のチャンターで使用できません。
そうなんです、リードってチャンターのメーカー毎に形状やつくりが微妙に違うのです。
なのでアイリッシュパイプを演奏したい場合は楽器自体の練習以上にメンテナンス技術も必要になってきます。
話は逸れましたがとにかくアイリッシュパイプは素の状態で2オクターブの音域を持ちます。
音を止めることなく演奏できる。 好きなだけ音を止めることができる。
この二つって実は凄い事なんですよ。
電気を使用しない楽器では擦弦楽器(バイオリン類)と循環呼吸を用いた笛類のみが出来る事です。
管楽器の場合、機械的な構造を持たずに継続的に音を出し続けようと思うと、循環呼吸を用いるしか方法がありません。
そこで人々が考えたのは循環呼吸で使用しているほっぺたの部分をバックに置き換えることによる代替案?だったのではないかということです。
でも喜びもつかの間、一旦バックに空気を貯めそこに接続されたパイプから音が鳴り出すとその音を切る事ができないのです。
そこで人々は音を切る為にメロディー音の前に規定された音を挿入することで音を切る事を考える様になりました。(想像ですけどね。)
基本的にバグパイプ類はこの規定された音(装飾音)をメロディー音の前に挿入することによって音を切る楽器だと思って頂いて良いかと思います。
ところが人々の欲求は今度は自由に完全に音を止められたら良いのに。。。。と思うようになったかどうかは知りません(笑) とにかく不思議なもので今度は音を完全に止める工夫を考えたのです。
アイリッシュパイプではそれを次の様な方法で実現しました。
演奏中チャンターの端(音が出る方)を膝(太ももの上部を便宜上、膝と言いますね)の上に置きます。
そして全ての指穴を押さえると音が止まります。
次に目的の音を出す指穴のみ開けます。
すると完全に音が切れている状態から音が鳴り始めます。
さらに再び全ての指穴を押さえると又完全に音が止まってしまいます。
これを高速で連続運動するとスタッカートで演奏している状態になります。
笛類では一音一音タンギングを行なった状態、フィドルでは一音一音弓を上げ下げした状態ですね。
一般的には上記の二つテクニック、装飾音の挿入と完全に音を切る方法を演奏中、瞬時に切り替えて演奏します。